東京大学 獣医内科学教室
血液・腫瘍性疾患 研究チーム
University of Tokyo
Veterinary Internal Medicine
(Hematology & Oncology Team)
English

HOME > RESEARCH

犬の組織球性肉腫の分子病態の解明と新規治療法の開発


 犬の腫瘍性疾患の中でも組織球性肉腫は極めて予後不良な疾患です。我々はこの疾患の約40%でTP53遺伝子に変異が認められることを報告しました(Asada et al., J. Vet. Med. Sci. 2017)。またこれらの遺伝子変異がTP53遺伝子の機能に与える影響やその臨床的意義の検討も行っています。
 さらに現在は次世代シーケンサーを用いたゲノムDNA配列やとランスクリプトーム解析によってその分子病態を網羅的に解析しています。
 また、これまでの我々の研究成果から、組織球性肉腫に対して効果を示す可能性がある新たな抗がん剤が見出されたため現在その効果を実際の症例で確認する臨床試験を動物医療センターにて行っております。詳しくはこちらをご覧ください。
 


小動物の骨髄疾患の分子病態の解明と新規治療法の開発


 骨髄疾患は貧血などの血球減少をもたらす主要な原因の一つです。主な骨髄疾患として白血病などの腫瘍性疾患や異形成性疾患、そして免疫介在性疾患などがありますが、小動物においては免疫介在性とされる骨髄疾患と診断される症例が多いことがわかってきました。しかしながら、我々はこれまでの研究結果から、免疫介在性とされる疾患を含む多くの骨髄疾患では免疫学的な異常とは異なる真の病態が存在するのではないかと考えています。
 そのため、現在我々は次世代シーケンサーを用いてゲノムDNA配列やエピゲノムの異常を網羅的に解析しており、その病態との関連を検討しています。
 将来的には、これらの新たな病態概念に基づいて、既存の薬剤では治療が困難であった症例に対する有効な治療法を開発していきたいと考えています。
 


犬のリンパ腫におけるエクソソームが果たす役割の検討


 リンパ腫は動物においてもっとも多く認められる造血器腫瘍ですがその分子病態は未だ不明な点が多いのが現状です。
 近年、腫瘍性疾患の進行には腫瘍細胞自体の異常だけではなくその周囲の微小環境とのコミュニケーションが非常に重要な役割を果たしていることが明らかとなってきました。我々はその細胞間のコミュニケーションに用いられる様々な因子の中でも特に細胞外小胞であるエクソソームに着目し、犬のリンパ腫細胞由来のエクソソームが内包する分子プロファイルを明らかにしました。
 この研究成果を元に、現在は腫瘍細胞由来のエクソソームが免疫細胞の機能にどのような変化をもたらすか詳細に検討しています。
 将来的にはこれらの研究から明らかとなる新規分子病態を基にした新規治療法の開発を目指しています。
 


犬のリンパ腫における化学療法耐性機構の解明


 リンパ腫はほとんどの症例で当初は化学療法に非常によく反応することが知られています。しかしながら治癒は非常に困難であり、いずれ化学療法に対する耐性を獲得してしまうことが治療のもっとも大きな壁となっています。
 この壁を越えるべく、我々はこれまでに化学療法耐性をもたらす分子機構の解明を目指し、精力的に研究を行ってきました(Tomiyasu et al., Vet. Sci. 2015 Review)。しかしながらこれらの研究成果から既知の因子では犬のリンパ腫における化学療法耐性は説明できないことが明らかとなったため網羅的な遺伝子発現プロファイルの解析を行ったところ、近年我々は新規耐性関連分子を明らかとすることに成功しました(Suenaga et al., Vet. J. 2017)。現在これらの分子が臨床例において化学療法耐性をもたらす詳細な分子機構の検討を行うとともに、これら分子の遺伝子発現プロファイルを基に事前に化学療法の有効性を予測するシステムを構築しています。


猫のリンパ腫における化学療法耐性機構の解明


 猫においてもリンパ腫はもっとも多い造血器腫瘍であり、犬と同様に当初は化学療法に非常によく反応することが知られています。しかしながら、やはり化学療法に対する耐性を獲得してしまうことが治療のもっとも大きな壁となっています。
 猫のリンパ腫における化学療法耐性をもたらすメカニズムは何も分かっていないと言っても過言ではありません。そこで我々は現在、網羅的な遺伝子発現解析を用いてまず化学療法耐性に関わる分子の探索を行っています。